中宮寺・広隆寺、弥勒菩薩半跏像の優美なアルカイックスマイルを拝観

先日の土曜・日曜、奈良 中宮寺、京都 広隆寺弥勒菩薩半跏思惟像を拝観してきた。初日は中宮寺、二日目は広隆寺に参拝。
篤信家にはほど遠い私であるが、実際に拝観してみると「ほんまにキレイな仏さんやなあ」と感嘆した。
こころの奥底から和やかになり、幸せな思いがする御仏である。何れも国宝に指定されているが、それにふさわしい名品である。
仏像は、真っ直ぐに屹立する立ち姿か、あぐらをかいて座る姿が一般的であり、威厳にみちてはいるが近寄りがたい印象を受けることが多い。
これに反して、弥勒菩薩半跏像は右足を左足の腿にのせ、手を頬に寄せて瞑想しているお姿。アルカイックスマイルと称される微笑みを浮かべており、神々しい気品にはあふれてはいるが、包容力ゆたかな慈母のような優しさにみちた御仏である。
中宮寺と、広隆寺のどちらも素晴らしい御仏であり、ミロのビーナスミケランジェロ聖母マリアピエタ像などに匹敵する超一流の芸術作品と思われる。
いずれも木造の御仏であるが、中宮寺は光背があり黒くつややかに輝いている。他方、広隆寺は光背がなくムク材の木肌の色調である。中宮寺は、より御仏のイメージが強く、広隆寺はアート作品のイメージが強いかも知れない。どちらも優美ではあるが、広隆寺弥勒はやや中性的であり、中宮寺弥勒は女性的な印象を受ける。
中宮寺広隆寺は共に、七世紀飛鳥時代に創建された聖徳太子ゆかりの御寺である。中宮寺は、太子の母・間人皇后あるいは太子ご自身が創建とされている。広隆寺については太子が本尊として祀られており、渡来系氏族の秦河勝が創建と伝えられる。
御仏の作者は、定かではないが、仏教伝来間もない時代なので、作者も渡来系氏族の人物かも知れない。
写真撮影禁止のため、WEBにアップして公開されている写真を参考資料として紹介しておきたい。
 
中宮寺 弥勒菩薩


 
広隆寺 弥勒菩薩

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中宮寺弥勒菩薩半跏像と、韓国国立中央博物館の金銅弥勒菩薩半跏像とを比較検証したNHKのテレビ番組が、YouTubeにコピーしてアップされている。新春スペシャルとして今年1月に放映された番組である。
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中宮寺と韓国の弥勒菩薩半跏思惟像の比較
NHK新春スペシャル「日本と韓国2000年」
http://www.youtube.com/watch?v=xAWONv7Je34

中宮寺と韓国の金銅弥勒をビデオで比較して見る限りでは、御仏のお顔の表情がかなり異なるように思われる。

広隆寺の御仏については、国産か朝鮮半島からの渡来仏か論議がある。YouTubeを見た印象としては、広隆寺弥勒菩薩の方が韓国の金銅弥勒菩薩半跏像との類似性が強いのではないかと思われる。


中宮寺法隆寺の境内にあって参拝者も多いが、広隆寺はやや参拝者が少ないので比較的ゆったりと見学できる。
JRを使えば一日でも両方の御寺を参拝できるはずなので、涼しくなる秋にでも家族を連れて再度訪問してみたい。