ネットとTVの融合:Googleが提示するビジネスモデル「Click-to-Play動画広告」

Googleが、同社のアドワーズ広告で「テキスト広告」だけではなく「動画広告」も新しい表示形式として利用可能にしたことが先日発表された。
詳細な広告セールス資料が入手できたので内容を確認してみると、Click-to-Playと名付けられた新しい動画広告手法は、TVCM素材を流用してネットで簡単に配信できることを意識したビジネスモデル。ネットとTVの融合という当世流行のテーマに対する、Googleならではの独創性と先進性にあふれた模範回答として評価したい。
広告主にとって極めて魅力的な条件を備えているため、大手広告主・ナショナルクライアントがキャンペーン展開をする場合、TVCMと連動したインターネット広告手法としては、Click-to-Play広告を利用する可能性が極めて高い。
日本の広告費:年間5兆9625億円のうち、TVCMは約1/3の2兆411億円。TVCM予算の1/10がClick-to-Play広告に振り替えられるだけでも巨大な広告費がGoogleに投下されることになる。これまでロングテール=中小企業や個人の広告主のターゲティング型SP広告を得意としていたGoogleが、大手広告主のブランディング型マス広告領域でも一気にシェアを拡大する強力な起爆剤になるであろう。

TVCMを簡単にネット配信できるClick-to-Play動画広告

Click-to-Play動画広告は、TVCMの素材を流用してインターネットでも簡単に配信できるシステムである。Flash技術を生かした音声と映像によるリッチメディア広告そのものは既に実施されているが、GoogleのClick-to-Play動画広告は広告主にとって、次のような魅力を備えている。

1.TVCMの内容をインターネット配信するためのデータ変換など煩雑な作業が不要
大手広告主のサイトでは、TVCMの素材を流用したリッチメディアコンテンツがオンエアされている。こうした素材を流用して音声情報を含む動画部分のコンテンツを簡単にネット配信できるのがClick-to-Playの魅力のひとつ。画像データを添付ファイルとしてメールを送付するのと同じような手順で、入稿作業が簡単にできる。
動画広告に利用できる素材は、75MB以下のAVI:ASF:QuickTime:WindowsMediaplayerおよびMPEG形式のファイル。これらの素材を入稿すると、Googleがサーバ上で自動的にFlashファイルに変換して広告配信するので、媒体ごとに異なる様式の動画データを用意する必要がない。
2.的確にターゲットを絞り込んだ広告が可能
広告の掲載媒体はGoogleAdsenseネットワークを構成するWEBサイト。広告商品やサービスとのマッチング性が高いと思われるWEBページに自動的に広告配信する「コンテンツターゲティング広告」、ネットワークの中から希望サイトを選択して広告配信する「サイトターゲット広告」の2種類から広告手法を選択できる。
3.インプレッション効果とサイト誘導効果の「一石二鳥」
検索連動アドワーズ広告が人気の理由は成果報酬型の課金システム=表示回数ではなくクリック回数に応じて課金されるPay Per Clickシステムにあるが、「Click-to-Play動画広告」でも「コンテンツターゲティング広告」を選択すれば同じシステムを利用可能。広告が表示され、動画広告が何回再生されても、ユーザーが広告主のサイトへジャンプしないかぎり広告費は課金されない。
「テキスト広告」と比較すると「動画広告」インプレッション効果は極めて高いと予測される。同じリッチメディア型でも表示された時点で広告費が発生する通常のバナー広告と比較すると、「Click-to-Play動画広告」は広告主にとって極めて有利である。インプレッション効果に関しては無料、サイト誘導効果に対してのみ対価を支払えばすむ「一石二鳥」の成果報酬型広告なのである。
同じ「Click-to-Play動画広告」でも「サイトターゲット広告」は表示回数に応じて広告費が発生する、従来どおりの課金システムなので広告費用の観点からみた魅力には乏しいと思われる。