SEM:広告業界に徘徊する「検索連動広告」という妖怪

企業のマーケティング活動において、インターネットの果たす役割は非常に大きくなっています。インターネットの特性を生かした独自の広告手法として脚光を浴びているのが「検索連動広告」。インターネット広告全体の中で約40%のシェアを占めており、マスコミでも注目されるようになりました。
「検索連動広告」としては、OvertureとGoogleが世界的な2大ブランドです。
インターネット広告、中でも「検索連動広告」は、かつてカール・マルクスが「ヨーロッパを徘徊する妖怪」と表現した「共産主義」と同様に、広告業界では脅威の存在となっています。ここ数年の急速な成長ぶりや、それを支持するユーザーの多さに加えて、インターネット専業広告会社やWEB制作会社などのSEOSEMに関するプロパガンダによって、「よく分からないけれど、何か凄いみたい」という評判が独り歩きしているのです。広告主と媒体との直取引が基本になっており、単なる仲介者としての広告代理店は不要というシステムが一般化することへの危機感が根底にあるのはいうまでもありません。
今日の朝日新聞・別刷be:Digitalにも「あなたのホームページに全国のお客さんが押し寄せるサービスのお知らせです」というキャッチフレーズでOvertureの広告が掲載されています。
広告が表示される回数やスペースに対してではなく、広告の効果に対して広告費が発生するという成果報酬型の料金体系は極めて合理的であり、広告主としては、TVCMや新聞広告なども同じシステムを適用してほしいというのが本音でしょう。アドバタイジングとセールスプロモーションの違いといった論理は、理論的には正しくても、広告主としては笑止の言い草であることは言うまでもありません。広告主の視点からすれば待望の広告システムであり、同じマスメディアでも右脳型ホット媒体のTVとは異なる左脳型クール媒体のインターネットの特性を生かす広告システムであるのは間違いなく、私自身もWEB広告手法として推奨してきました。
Yahoo!のキーワード検索システムにGoogleが採用されていた2003年頃に推奨した当時は笛ふけど踊らずだったのが、近頃はSEMを「魔法の杖」のように礼賛する「にわか信者」が多くなり「検索連動広告」以外のインターネット広告は見向きもしない状況です。「検索でがんがんヒットするHPの作り方」といったSEOSEM礼賛のマニュアル本が横行する世情は、「検索連動広告」を過大評価しすぎていると感じていますので、「検索連動広告」の効用と限界について考察してみたいと思います。