My Favorite things/蒼海-副島種臣の書

副島種臣といえば、明治時代の政治家で維新の功労者という程度の知識しかありませんでした。昨年、NHKテレビの「新日曜美術館」という番組をみていたときに、副島種臣の書が特集されており、書家としての素晴らしい作品をみて感嘆しました。
代表作として「帰雲飛雨」があります。書ではありますが、絵画的な表現力をもつ力強い作品です。「帰雲飛雨」という言葉の意味はよくわかりませんが、全体から受けるイメージとか文字の意味からすると「龍」に関する漢籍にちなむのではないかと推察します。神獣として畏怖される「龍」が、空へ駆け上り雨を降らせる鬼気迫る姿がイメージされる見事な作品です。

明治の元勲らしい気迫にあふれた一連の作品も素晴らしいと思いますが、個人的に好きなのは「洗心亭」「杜甫曲江対詩句」「野富煙霞色。天縦花柳春」(※「煙」は火編に旁が因。文字表示が出来ないので代用)といった軽妙洒脱なエスプリにあふれた作品。
中でも「野富〜柳春」には、書の素養をきちんと習得した上での自由な「遊び心」や新しい表現へのチャレンジ精神が感じられて、好感がもてます。「帰雲飛雨」にも、豪快な反面、俵屋宗達の「風神雷神図」の軽妙洒脱さにどこか通じるものがあります。謹厳で怖いお爺さんに見えるけれど、愛すべきヤンチャ坊主の面影や稚気を内に秘めた人間性が、書に現れているようです。