伸び盛りネット広告の代名詞=バナー広告の脆弱な実態

マスコミ4媒体が伸び悩む中で、伸び盛りのインターネット広告。2006年には前年比約30%増の3,630億円となり、雑誌3,887億円を上回るのは必至の状況であるが、手放しのWEB礼賛論には脆弱性を感じざるを得ない。
広告媒体としてのインターネットの実力、「バラ色」とはいえない実態を理解するうえで興味深いデータがある。
WEB広告の代名詞ともいえるバナー広告の出稿状況に関する調査レポート:ネットレイティングスのオンライン広告統計レポート「アドレレバンス」である。
nikkei BPnet「NET Marketing」からの孫引きになるので気恥ずかしいが、レポートによれば広告出稿量が多かったWEBサイトランキングは次のようになっている。

■バナー広告出稿量が多かった媒体上位10サイト:2007年5月

順位 媒体名 表示回数imps シェア%
1 Yahoo! JAPAN 20,138,780 51.0
2 mixi 5,298,572 13.4
3 ECナビ 1,315,869 3.3
4 Infoseek 966,001 2.4
5 NIKKEI NET日経新聞 963,298 2.4
6 goo 817,957 2.1
7 価格.com 768,072 1.9
8 msn 676,838 1.7
9 ぐるなび 560,485 1.4
10 asahi.com朝日新聞 513,293 1.3

※表示回数は1,000imps単位。表示されているシェア%は、バナー広告の日本全体の総インプレッション(推計)に対する占有率。
*資料出処
http://blog.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/135271

Yahoo!JAPANは、5月の月間で約200億imps:日本全体約400億impsの半数を占め、断然トップ。2位のmixiが10%を超えているが、3位以下は1〜3%程度の占有率に過ぎない。1強・1弱、その他多勢とでもいうべき状況だ。上位10サイトの合計は約320億imps:約80%の占有率である。
調査データを公表しはじめた昨年9月からのランキング3位以下は、順位に多少の変動はあるけれどほぼ同じ顔ぶれで、5月のリストにないのは「日刊スポーツ」「Excite」の2サイト。ロングテールマーケットといわれるインターネット市場のイメージとは相反して、Yahoo!JAPANが一人勝ちの寡占市場となっている。4マス媒体:テレビ・新聞・雑誌・ラジオでは1社がこのように突出したシェアを占めることはありない。CGMがもてはやされるユーザー主権の民主主義的WEB2.0ではあるが、少なくとも日本のネット広告市場の現状は徳川幕府が支配する鎖国時代に似ているのではないだろうか。幕府=Yahoo!JAPANの封建主義的鎖国体制に対抗して、諸藩=弱者WEBサイト連合によるグローバルな民主主義国家への脱皮をリードする旗手としてのGoogleの役割が期待される。

バナー広告の出稿量では一人勝ちのYahoo!JAPANではあるが、懸念点も少なくない。例えば、バナー広告のクリック率=CTRの低下傾向。昨今流行の行動ターゲティング広告は、ノンターゲティングに比較すると多少ましではあるが、そう高いとはいえない数値。業種や商材にもよるが、Googleに代表される検索連動広告はもちろん、低迷する4マスと比較しても広告効果やコストパフォーマンスに疑問が残る。
インターネットはROIの効果測定が容易な透明性の高い広告市場であり、優勝劣敗の世界である。数十億ものユーザーという「見えざる神の手」によって媒体や広告手法の価値が評価され、過酷な生存競争による勝ち組への寡占化が今後も一層進展すると思われる。
アドネットワーク配信・アフェリエート・コンテンツマッチ等と称する、弱小WEB媒体の空き枠を束ねてバルク売りする成果報酬型広告との競合も多くなるであろう。
株式上場による創業者利得や株式時価を背景にしたM&A等の投資による収益を別にすれば、本業のIT事業領域から収益をあげているIT企業は数少ない、というネット業界の実態が透けて見える調査レポートではある。