mixiの弱み

<株式時価総額と業績の乖離>
こうした強みがある反面、mixiの実際の業績はどうだろう。年間換算して売上約100億円という予測数字は、創業から間もないベンチャー企業としては素晴らしい数字である。利益率の高さも投資家にとっては魅力であろう。が、Yahoo! JAPANに次ぐインターネット広告媒体第2位であり、11月17日現在の株式時価総額2,600億円の企業の業績としては、期待はずれの数字といわざるをえない。

<バナー広告の出稿 減少>
将来性に期待した先行投資だという見方もあろうが、成長性についても黄信号が灯っている。
出稿媒体トップのYahoo! JAPANや3〜4番手のMSN、infoseekは比較的安定的に推移している一方、2位のmixiの広告出稿量が8月・9月2ヶ月連続で減少したようだ。8月は夏枯れと言い訳できるかもしれないが、9月がさらに大幅減というのがツライ。
ネットレイティングス:オンライン広告統計レポート「アドレレバンス」
http://blog.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/151322
バナーなどの固定ディスプレイ広告は、検索連動広告に比較して費用対効果が劣ることが多いのが一般的な実情である。エクスバンド型や音声付き動画のインターネットCM等も普及してきているが、クールなLean forward型メディアというWEBの本質から見て限界があるだろう。
電通のAISAS理論でいえば、インターネット広告が効果的な領域は3番目のSearchと5番目のshareである。クライアントの中には、AIの領域で固定ディスプレイ広告を使おうとする例も少なくないが、無限大に広がるWEBでそれなりのリーチを稼ごうとすれば予算も膨大になる。広告を収益源にするビジネスモデルとしては同じでも、検索連動広告をメインにしたGoogleと、固定ディスプレイ広告をメインにするmixiとでは根本的な違いがある。固定ディスプレイ広告でも、バラ撒き配信型ではなく行動履歴や購買履歴によるターゲティング配信型へ主役が移行していくのは必至と思われる。

<大学生を中心にしたユーザー構成>
mixiのユーザー構成を年齢的にみると「流行に敏感/好奇心旺盛で、リアルでもネットでもアクティブなM1・F1=20才〜34才の男女ユーザー」が約75%を占めている。M1・F1は広告のメインターゲット層であるが、近年は新聞・TVなどのマスメディア離れが著しい。mixiの人気の理由は、この層にアプローチできる貴重な媒体という側面があった。M1・F1が中心というのは事実だが、詳細に見ると18才〜24才が50%弱を占めている。つまり、実際のメインユーザーはM1・F1でイメージする20才〜30才前半のサラリーマンやOLではなく、ヒマはあるがカネがない大学生なのである。
運営母体の株式会社ミクシィが「Find Job !」というIT系求人サイトから起業したこととに由来するユーザー特性であるが、広告媒体として見た場合のmixiの致命的な弱みといえるだろう。

<PCから携帯電話へ:利用媒体の移行>
急成長していた広告出稿が減速した背景として推測される直接的な理由は、期待した広告効果が得られなかったためクライアントのリピート出稿が減少しているのではないかということ。mixiへの広告出稿について、クライントが期待する成果が今後も得られないであろうと私は推測する。
理由その1:大学生や格差社会ワーキングプアの若者がメインユーザーである。
※高度成長期のF1・M1と現代のF1・M1の違い
理由その2:CGMSNSに旧来のマス広告の発想を持ち込むことのミスマッチ。
※ユーザー主導の民主的メディアを企業の論理で支配しようとする時代錯誤
理由その3:PCから携帯電話へ。アクティブユーザーの利用媒体の移行。
mixiの媒体資料によれば、アクティブなメインユーザーがパソコンから携帯電話へ移行しているようだ。
平均PV 1日約4億PVというYahoo! JAPANに勝るとも劣らないPVの内訳をみると、携帯電話からのアクセスが急速に増加。パソコンからのアクセスを携帯電話からのアクセスが本年8月に上回っている。

mixiの広告出稿量シェア約15%という数字が、マーケティング用語で著名なロジャースのイノベーター理論:普及率16%前後に大きな溝=キャズムがあるという指摘に相通じるところが興味深い。