WEBサイトランキング推移からみたネット広告の課題
電通調査によれば、2007年のインターネット広告費は約6,000億円。雑誌広告費4,585億円を抜き去ったようだ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2008/pdf/2008008-0220.pdf
マスコミ4媒体が3年連続して前年を下回る一方で、ネット広告費は連続して増加となったけれど、ネット広告に関わる現場の実感としては活況というにはほど遠い気がする。
背景には、メディアとしてのWEBに構造的な変化が著しいことがある。ハイネックからロングテールへ、パソコンによるネット接続からモバイルによるネット接続へといったトレンドである。媒体別の広告掲載出稿量では、Yahoo! JAPANに次ぐ第2位はmixi。しかし、昨年夏にPCからのアクセスよりモバイルからのアクセスが上回ったようであり、mixiがその地位をいつまで堅持できるか疑問が残る。YouTubeの躍進を背景にGoogle.comがアクセスランキングの2位に浮上したことや、「ニコニコ動画」の平均視聴時間がYahoo! JAPANを凌いでいることなどが、構造変化を象徴している。
備考)mixiが媒体別の「広告掲載金額」でYahoo! JAPANに次ぐ第2位と以前のブログで記載していたが誤り。正しくは、媒体別の「広告掲載出稿量」第2位なので訂正したい。
例えば、インターネット媒体の最近3年間のアクセスランキング推移が下記。
■WEBサイトアクセス者数ランキング
2007年 | 2006年 | 2005年 | |||
順位 | ドメイン名 | 順位 | ドメイン名 | 順位 | ドメイン名 |
1 | yahoo.co.jp | 1 | yahoo.co.jp | 1 | yahoo.co.jp |
2 | google.com | 2 | rakuten.co.jp | 2 | nifty.com |
3 | rakuten.co.jp | 3 | nifty.com | 3 | rakuten.co.jp |
4 | goo.ne.jp | 4 | microsoft.com | 4 | microsoft.com |
5 | microsoft.com | 5 | amazon.co.jp | 5 | infoseek.co.jp |
6 | nifty.com | 6 | goo.ne.jp | 6 | biglobe.ne.jp |
7 | amazon.co.jp | 7 | biglobe.ne.jp | 7 | amazon.co.jp |
8 | fc2.com | 8 | fc2.com | 8 | goo.ne.jp |
9 | wikipedia.org | 9 | infoseek.co.jp | 9 | ocn.ne.jp |
10 | microad.jp | 10 | jword.jp | 10 | msn.co.jp |
※(株)ビデオリサーチインタラクティブによる各年10月〜12月調査データ。推定接触者数に基づくランキング。
2005年にはyahoo.co.jp:nifty.com:rakuten.co.jp:microsoft.com:infoseek.co.jpなどの検索サイトやISPサイトが上位を占めているが、2007年にはgoogle.com:fc2.com:wikipedia.org:microad.jpなどのCGM系サイトがベストテンにランキング入りしている。
◎google.com:Yahoo!に次ぐ2位に浮上。検索エンジンを主にしたgoogle.co.jpに対して、google.comはオープンアプリケーションやYouTubeなどがメイン。YouTubeへのアクセス増が貢献。
◎fc2.com:無料ブログやレンタルサーバ事業を展開。
◎wikipedia.org:ネットユーザが書き込み作成し、編集したWEB百科辞典。
◎microad.jp:サイバーエージェント100%出資のネットベンチャー。コンテンツターゲティングやブログネットワークの広告配信ネッットワーク。
いわゆるweb2.0のロングテール型webサイトがマーケットの主流として台頭していることが推察される。広告媒体として見た場合、大手法人サイトへのハイネック型市場から個人ブログを含むロングテール型市場への構造転換が進行しているわけだ。
別の言い方をすると、WEBという名の「大型ショッピングセンター」で「ウインドーショッピング」を楽しむユーザーが激減していると思われる。ユーザのネット利用構造の変化が、バナーやテキスト広告のCTR=クリック率の著しい低下の理由であろう。広告代理店としては、CTRの低下はネット広告営業の上で大きな阻害要因となる。Yahoo! JAPANその他の大型サイトでは行動ターゲティング広告が救世主的な存在になっているが、CTRやCPCを指標にしたインターネット広告の経費効率は必ずしも良好とはいえない。他の媒体からみて割高感が否めないというのが粗直な感想である。
ネット広告の主流である検索連動広告は、バナーやテキスト広告との対比では一般的に経費効率が高いけれど、ボリュームを稼げないのが課題。数年前の状況と比較するとコストもかなり上昇している。
本年1月に大幅なサイトリニューアルをしたYahoo! JAPANは、リニューアル後もアクセスは順調。圧倒的な存在感を誇示しているようだが、msnのアメリカYahoo!買収問題もあり予断をゆるさない状況だろう。
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20368102,00.htm
今回の電通調査では広告費の内訳について大幅な見直しが行われており、ネット広告制作費が媒体費にプラスされている。約6,000億円は。ネット広告制作費1,412億円+媒体費4,591億円の合計値である。ネット広告制作費については「バナー広告等の制作費および企業ホームページの内、商品/サービス・キャンペーン関連の制作費」と定義されている。求人情報サイトや不動産の物件情報サイトなどをネット広告費に合算するなら、さらに数字としては大きくなるであろう。