トヨタの手持ち現預金は1兆8,500億円、単純計算では年収800万円の社員を23万人雇用できる。
今期は赤字かもしれないが、前年度は2兆円を上回る営業利益をあげている。戦後最長69ヶ月におよぶ好景気による利益の蓄積=内部留保があるはずなので、資産の状況を貸借対照表からみてみよう。煩雑になるため、文章中の金額はまるめ数字として表示している。
<ポイント-1>
資産合計、32兆9,000億円。うち現金および現金同等物=現預金は1兆8,500億円。資産合計に対する現預金の比率は5.63%にすぎない。2009年3月期の連結売上高21兆5,000億円に対する比率は8.6%。
経営者サイドのいうとおり「内部留保は必ずしも現金や預金として保有されているわけではない」のは事実。
たな卸資産という在庫や、土地建物・機械装置や減価償却という有形固定資産、金融債権等の比率が高く、これらは容易に現金化はできない。
<ポイント-2>
資産に対する比率は低いが、現預金の金額1兆8,500億円は巨額である。2008年の営業利益2兆3000億円の約80%に達する金額である。広告業界で言えば、TV広告の売上金額が約2兆円である。
トヨタの従業員数や平均年収は、Yahoo!ファイナンス会社情報によれば、単独・71,503人、連結・324,537人。平均年齢37.1歳、平均年収8,290千円。
http://profile.yahoo.co.jp/fundamental/7203
従業員数(連結)×平均年収で試算した人件費の総額は約2兆7,000億円となる。
内部留保の現預金だけで、人件費の約70%=年収800万円の社員を23万人雇用できる計算になる。
正社員だけではなく、臨時雇用等も含めれば従業員数は40〜60万人規模になるかも知れないが、現預金が潤沢な会社であることは間違いない。
<ポイント-3>
トヨタ銀行と揶揄されるように、定期預金・金融債権・長期金融債権・有価証券およびその他の投資有価証券等の資産比率が高い。金融債権・長期金融債権が約10兆円、有価証券およびその他の投資有価証券が3兆円、関連会社等に対する投資が2兆円もある。
<ポイント-4>
体力に余裕のあるトヨタとはいえ、明日は我が身。企業経営の論理からすれば、内部留保を使って雇用を維持せよというのは論外の要望であろう。銀行による「貸し渋り」「貸しはがし」を経験した経営者サイドからすれば、内部留保は設備投資や資金繰りのためにとっておきたいというのが本音であろう。
<ポイント-5>
株主への配当は2008年度、4,432億円。2009年度は、中間期で2,037億円。企業は株主のものが「常識」というグローバル企業として、果たして下期の配当はどうするかが興味深い。
■トヨタ自動車 貸借対照表:資産の部
※金額単位:億円。
( )内の数字は2009年3月期の売上高予測21兆5,000億円に対する比率。
項目 | 09年度 第2四半期決算 | * | 08年度 決算 |
年月 | H20年9月30日現在 | * | H20年3月31日現在 |
○流動資産 合計 | 124,221 | (57.78%) | 120,862 |
うち、現金および現金同等物 | 18,506 | (8.61%) | 16,285 |
〃 定期預金 | 507 | (0.24%) | 1,347 |
〃 有価証券 | 6,831 | (3.18%) | 5,422 |
〃 受取手形および売掛金 | 17,164 | (7.98%) | 20,402 |
〃 金融債権 | 44,230 | (20.57%) | 43,011 |
〃 たな卸資産 | 19,613 | (9.12%) | 18,257 |
○長期金融債権 | 64,460 | (29.98%) | 59,747 |
○投資およびその他の資産 合計 | 60,976 | (28.36%) | 65,853 |
うち、有価証券およびその他の投資有価証券 | 30,538 | (14.20%) | 34,292 |
〃 関連会社に対する投資およびその他の資産 | 20,709 | (9.63%) | 20,985 |
○有形固定資産 小計 | 178,056 | (82.82%) | 173,962 |
うち、土地 | 12,722 | (5.92% ) | 12,620 |
うち、建物 | 36,501 | (16.98%) | 35,806 |
うち、機械装置 | 94,622 | (44.01%) | 92,706 |
うち、賃貸用車両および器具 | 30,853 | (14.35%) | 29,223 |
○減価償却累計額 | 98,729 | ( 45.92% ) | 95,842 |
■資産合計 | 328,986 | (153.02%) | 324,583 |
■2009年(H21年)年度末売上高(予測) | 215,000 | (100.00%) | * |
備考)
2009年(H21年)3月期の年度決算(売上げ/利益)等の予測数字はAデータ。
貸借対象表:資産等の数字はBデータ。
A:2009年(H21年)3月期 業績予想の修正:2008/12/22リリース
http://www.toyota.co.jp/jp/ir/financial_results/2009/1222/presentation.pdf
B:2009年(H21年)第2四半期 決算要旨:2008/11/06リリース
http://www.toyota.co.jp/jp/ir/financial_results/2009/semi/yousi.pdf